shotanaga’s blog

人生は旅。

出会いを大切にして、誠実に生きること

 「大村智ものがたり 苦しい道こそ楽しい人生」 馬場錬成 2015年 毎日新聞出版

 著書は、山梨県韮崎市出身で、昨年にノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村智教授の少年期から受賞までの体験を紹介している。彼は静岡県伊東市の川奈ゴルフ場で採取した土から偶然発見した微生物によって、アフリカなどで深刻化していたオンコセルカ症という失明や目の障害を引き起こす感染症の特効薬イベルメクチンの開発に貢献した。この業績をもたらしたものは、彼の出会いを大切にしようとする社交性の高さと他人がやらないようなことに専念して必ず人の役に立とうという誠実さであると思う。

  また、彼は美術に対しても人並み以上の関心を持っており、出身地の山梨県韮崎市には自らが建てた韮崎大村美術館がある。研究だけでなく、美術にも関心を持つ彼の教養の高さに尊敬せずにはいられない。機会があれば、彼の美術館を訪れてみたい。

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真の政治家

 「戦う民意」 沖縄県知事 翁長雄志 2015年 角川書店

 保守・革新の対立を超越して「オール沖縄」を掲げて知事に就任した翁長氏。前知事が承認した普天間飛行場辺野古移設に反対して巨大な権力と闘っている姿が印象的だが、この著書で沖縄県民が幸福に暮らしていけるように、沖縄経済の発展のために職務を全うする素晴らしい政治家だと思った。これは困難な闘いだと思われるが、私はこれからも応援していこうと思う。

 沖縄の基地問題については私も関心を持っている。沖縄は基地のおかげで経済が成り立ってると指摘されることがある。でもそれは翁長氏が主張するように大きな誤解であると思う。たしかに戦後から本土復帰までの時期は基幹産業もなく、沖縄戦で荒廃した土地で農業を興すことも難しく、生きていくために基地関連産業に頼らざるを得なかった。しかし、現在は観光産業や日本とアジアの物流拠点として経済を発展させるのとは可能であり、基地関連産業の役割は相対的に低下している。むしろ基地が経済の阻害にさえなっている。また、日米安保体制は重要なのかもしれないが、沖縄に過剰負担を強いることは人権侵害にさえなりかねない。そのためにも沖縄の負担軽減のための県外移設、日米安保体制の抜本的な見直しについて考える必要が出てくる。

 そして問題になっている辺野古移設では、実質的には海兵隊のための新基地建設になるが、これが本当に日米安保のために必要なのだろうかと疑問が募る。冷戦が終結したこの時代に海兵隊を配備する必要性は少ないと思われ、中国や北朝鮮に対しての抑止力とするとしても必ずしも沖縄が最適な拠点だと断定もできないであろう。民意を無視した辺野古移設は、人権侵害や環境破壊を招くだけであり、かえって日米同盟に亀裂を生じることになるかもしれない。

 私は3月から2週間ほど沖縄やその周辺の島々を旅する予定だ。出発までに沖縄の歴史、文化、政治などを学んでいきたい。

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若き陸軍大尉の沖縄戦

 「沖縄戦 二十四歳の大隊長 陸軍大尉 伊東孝一の戦い」  笹幸恵  2015年 Gakken

 沖縄に決戦などなかった。米軍の圧倒的な物量と人員の差により、初めから勝ち目のなかった沖縄戦。それでも約800人を統率する第32軍伊東大隊の若き陸軍大尉の「人は理屈だけで動いているわけではありません。意地も誇りもありますからね」という彼の心情から本土決戦までの時間稼ぎの持久戦を軍人として最善を尽くそうと意気込んでいたことが伺える。

 1945年4月1日の米軍上陸から8月29日の降伏、武装解除まで彼は多くの部下や戦友を失い、米軍の侵攻をくい止めることができずに南部撤退を余儀なくされる。彼はそのなかで、悲しみや苦しみをおくびに出さず、大隊長としての気概を振る舞った。圧倒的不利の立場ながらもこの戦況をいかに打開していこうか自分なりに考えながらも、司令部の命令は絶対に従わなければならないという組織の掟に苦しみながら戦闘指揮をせざるを得なかった。戦争が終わってからも多くの部下や戦友を失ったなかで生き残ってしまった責任を背負いながら沖縄戦とは何だったのかを現在進行形で自問し続けている……

 私は戦争が何をもたらしたかを考慮に入れたとしても、 沖縄戦を戦った彼らに対しては評価されるべきだと思う。ただ、沖縄戦を語る上では彼らが考えていたことだけでは物足りない。沖縄の住民はどう考えていたのか、沖縄で現地召集された防衛隊はどう考えていたのか、米軍はどう考えていたのかなど複数の立場から見ていく必要がある。3月に沖縄を訪れるつもりなのでそれまで様々な文献にあたってみたいと思う。

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過酷な運命に翻弄されて…

 「ルーツ」 アレックス・ヘイリー  安岡章太郎 松田銑 共訳  1977年 社会思想社

 私がこの著書を知ることになったのは、世界遺産検定の勉強をしているときだった。アフリカ西部ガンビア世界文化遺産「クンタ・キンテ島と関連遺産群」は、奴隷貿易の拠点で、負の遺産である。そのページの記述には、「ルーツ」で知られる作家アレックス・ヘイリーの先祖もこの拠点からアメリカに連行されたとあった。この著書をいつか読んでみたいと思ってすぐに購入した。

 著書では、奴隷船の船内の劣悪な環境をリアルに描写していた。多くの黒人が奴隷として自由、希望、生命を多くの奪い尽くした負の歴史に憤りを感じながら読み続けた。また、一攫千金をかけた闘鶏の試合の場面では、まるでその会場に居るかのようにドキドキし、自由を獲得した瞬間に彼らが喜びはしゃいでいる描写では、私自身も喜びが芽生えた。最後まで感情が動かされながら飽きることなく読み通した。

 アメリカにおいて黒人に対する差別が根絶したかどうかと問われると、なかなか肯定的な答えを出すことはできない。当時解放されて自由を得て喜んでいた彼らや著者は、アメリカ社会の現状を見てどんなことを考えているのだろうか…

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人生と向き合うための読書〜目標や夢を持つこと

 「かなえる力」 NSGグループ代表 アルビレックス新潟会長 池田弘 2014年 東京書籍

 著者は、神社の宮司を務まると同時に、アルビレックス新潟の観客動員数を劇的に増やしたり、新潟県内で子どもの教育に力を入れている実業家である。彼は仕事するにあたって「人の役に立つこと」「地域に貢献すること」を目標にして様々な実績を積み上げてきた。それらの目標は私自身にも共通している。
  目標や夢を持つことが重要である。それらが明確であればあるほど実現の可能性も大きくなる。また、周りにそれらの実現のために応援してくれるサポーターが多ければなおさらである。しかし、応援するというよりは、言い方が悪くなるが、それらを妨害する人のほうが多いのが現実である。彼らには悪気などなく、リスクの高い冒険をするよりは、安定した道を選んでほしいという忠告に過ぎない。そして、自分自身の目標の背骨が脆弱なためにその忠告を受け入れて諦めてしまうことは私も経験したことがある。目標や夢は、時間をかけてより明確にし、周りからの妨害に怯まないほど強固なものである必要性を感じた。
  また、目標や夢に向かって挑戦していく生き方よりは、安定を求めて生きていくことも1つの賢い生き方である。私だったら前者を選びたい。不安定な生き方になるため、リスクを伴い、痛い目に遭うのは確実である。だが、挑戦することは面白いことだと実感しているので、その過程で起きる失敗も苦に思わないはずだ。仮に安定志向を目指すとして、大企業や役所に就職したところで現在安定しててもこれからも安定しているとは限らない。要は、どちらを選んだとしても正解はない。
   著書は自分の人生を考えるために良い参考になった。これからも人生について真剣に向き合うための時間を意識的につくっていきたいと思う。

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仲間を大切にしたい

 「がんばっぺし!ぺしぺしぺし! 陸前高田市長が綴る"復興を支える仲間"との732日」 陸前高田市長 戸羽太  2013年 大和出版

 2011.3.11〜
「千年に一度」とも形容されるほどの戦後最悪の大災害となった東日本大震災。テレビも新聞もあまり報道しなくなったが、現在進行形で「復興中」である。福島の双葉町浪江町などのように復旧すらできなくなった地域もあるが……
 私にとっての東日本大震災はテレビの画面、新聞の紙面だけであった。とくにテレビの震災報道の中で一番印象に残っている場面がある。それは、奥さんが行方不明(後に死亡)になりながらも市民のために陣頭指揮に当たっていた戸羽太市長だった。彼はとても強い人だなと思っていたが、著書によれば、人の居ないところで悲しみにくれて泣いていたという。そんな彼を救ってくれたのが、被災地を支援してくれている仲間の存在だ。やはり仲間は大切な存在だと改めて認識するに至った。仲間が多ければ多いほどすごいってわけではないと思うが、助け合える仲間が周りにいれば人生は楽しくなると思う。困難も乗り越えられると思う。
  また、彼は子どもが希望を持って暮らせるような「世界に誇れるまち」にするために彼の仲間とともに陸前高田でイベントの開催など様々な取り組みをしている。私にできることは限られているが、陸前高田のみならず、被災地全体の復興を見届けたい。そして、いつか奇跡の一本松とともに活気溢れた陸前高田を訪れたい。
 

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ジャングルは人を変える

「像使いティンの戦争」 シンシア・カドハタ  代田亜香子 訳 2013年 作品社

 著書は、米国シカゴ生まれの日系3世のシンシア・カドハタ氏によって書かれた作品。主人公の像使いティンを中心にベトナム戦争で米軍に協力したラーデ族が、米軍撤退後に北ベトナム軍らに襲撃を受け、戦争に巻き込まれてしまう話である。
  ティンのお父さんが何度も言ったセリフ「ジャングルは人を変える」は、比喩的表現だと思われるが、主にジャンルの中が戦場となったベトナム戦争、戦争そのものが人を、日常を変えてしまう。ティンは、戦争に巻き込まれて日常生活で当たり前だった幸せを忘れてしまった。ある日、ティンのパートナーであった像のレディーと再開を果たすことで幸せを取り戻した。しかし、そのままレディーをキャンプに連れていけば、食糧不足が著しいために兵士の食糧にされてしまうかもしれない。そこで、考え、悩んだ挙げ句、悲しみを堪えながらお互いに強く生きていこうと誓ってジャンルの中でお別れをする。戦争という不条理の中、少年だったティンが少しずつ大人に成長していく姿も伺える。
  戦争に正義はなく、ただあるのは破壊にすぎない。そんなことを考えながら著書を読み終えた。

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