shotanaga’s blog

人生は旅。

若き陸軍大尉の沖縄戦

 「沖縄戦 二十四歳の大隊長 陸軍大尉 伊東孝一の戦い」  笹幸恵  2015年 Gakken

 沖縄に決戦などなかった。米軍の圧倒的な物量と人員の差により、初めから勝ち目のなかった沖縄戦。それでも約800人を統率する第32軍伊東大隊の若き陸軍大尉の「人は理屈だけで動いているわけではありません。意地も誇りもありますからね」という彼の心情から本土決戦までの時間稼ぎの持久戦を軍人として最善を尽くそうと意気込んでいたことが伺える。

 1945年4月1日の米軍上陸から8月29日の降伏、武装解除まで彼は多くの部下や戦友を失い、米軍の侵攻をくい止めることができずに南部撤退を余儀なくされる。彼はそのなかで、悲しみや苦しみをおくびに出さず、大隊長としての気概を振る舞った。圧倒的不利の立場ながらもこの戦況をいかに打開していこうか自分なりに考えながらも、司令部の命令は絶対に従わなければならないという組織の掟に苦しみながら戦闘指揮をせざるを得なかった。戦争が終わってからも多くの部下や戦友を失ったなかで生き残ってしまった責任を背負いながら沖縄戦とは何だったのかを現在進行形で自問し続けている……

 私は戦争が何をもたらしたかを考慮に入れたとしても、 沖縄戦を戦った彼らに対しては評価されるべきだと思う。ただ、沖縄戦を語る上では彼らが考えていたことだけでは物足りない。沖縄の住民はどう考えていたのか、沖縄で現地召集された防衛隊はどう考えていたのか、米軍はどう考えていたのかなど複数の立場から見ていく必要がある。3月に沖縄を訪れるつもりなのでそれまで様々な文献にあたってみたいと思う。

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