豊かさとは何か？

 「里山資本主義」 藻谷浩介 NHK広島取材班  2014年 角川書店

 課題先進国日本が抱える少子化や地方と都市の格差などの諸問題への処方箋として、マネー資本主義の補完システムとして、里山資本主義が挙げられている。

 著書では、岡山県真庭市の「木質バイオマス発電」やオーストリアのそれを活用した事例を紹介している。また、農家で収穫した野菜を地域内で消費するようにすることなど地域内でエネルギーや食糧を自給することでお金が地域外に流出することを食い止め、地域内でお金が循環することで地域活性化やコミュニティーの結束につながっている実例を取り上げている。

 2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災を受けて社会に対してこのままで良いのかと不安を覚えた日本人は私だけではないであろう。これらの出来事は本当の豊かさとは何かを問うものであったと思う。マネー資本主義による物質的豊かさから里山資本主義による精神的豊かさに本当の豊かさを求めるようになる時代に変わりつつあるのかもしれない。日本は、物質的豊かさの指標でもあるGDPだけを意識していては本当に豊かな国になれないと考えさせられる著書だった。